こんにちは、ドクタールウです。
今回もインフルエンザ関連です。
症例報告求む!「インフルエンザと異常行動」
昨シーズンから話題の「タミフル(一般名:リン酸オセルタミビル)と異常行動」の因果関係については、インフルエンザの流行が始まった今も、まだ結論が出てない。一部の研究で中間報告はあったが、最終報告はまだ。昨シーズン、1万人規模の患者を対象として行われた「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」の解析結果が、12月中にも公表される見込みで、この結果である程度の結論が得られるのではないかと期待されている状況だ。
しかし、この1万人調査でも、はっきりとした結論が出ない可能性もある。特に「飛び降り」などの重度の異常行動は、因果関係があるとしても発現頻度が低いので、1万人では調査の人数が足りないことが想定されるからだ。
そこで、より規模の大きい調査を目指して現在進行中なのが、「インフルエンザに伴う異常な行動に関する調査」だ。同調査で主任研究者を務めている国立感染症研究所感染症情報センターの岡部信彦氏に、その概要と意義を聞いた。
現在実施している「インフルエンザに伴う異常な行動に関する調査」は、大きく2つに分かれる。1つは「重度の異常な行動に関する調査」であり、もう1つは「重度+軽度の異常な行動に関する調査」だ。前者は国内すべての医療機関に報告をお願いしているもので、後者は全国に約5000あるインフルエンザ定点医療機関に報告していただくものだ。
インフルエンザ感染者が、このような重度の異常行動を起こす率はそれほど高くはない。仮に発生率が1万件に1件程度であれば、1万人の母集団を対象とした大規模試験であっても、症例が十分に集まらない。だから試験対象とする医療機関を限定せず、日本で発生した重度の異常行動をすべて拾い上げようと考えた。この点が、既に実施された「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」とは大きく異なっている。報告期間は来年の3月までとしている。
一方、軽度の異常行動については、定点の医療機関のみに報告を依頼した。定点医療機関に限定したのは、おそらく報告数が多くなるので、国内すべての医療機関を対象にすると収集がつかなくなるからだ。こちらの調査は、数が多いので、定点医療機関で治療したインフルエンザ患者の数から、大まかな発生率を求めることも可能だと考えている。
定点以外の医療機関の医師には、インフルエンザ感染者が上記の「重度の異常行動」を起こした症例を経験したら、ぜひ報告していただきたい。それを解析することで、薬を飲んでいる患者に異常行動が多いのか、多いのだとすると、どの薬を飲んでいる患者に多いのか、などが分かるだろう。
調査は、アンケート用紙に記入する方式で、診察した医師に回答をお願いする。今回の調査では、患者や患者の保護者に回答を求めることはしない。調査内容は、発熱日時、異常行動の発現日時、患者の年齢、処方薬の有無など。処方薬がある場合は、タミフルに限らず、ザナミビル(商品名:リレンザ)、シンメトレル、アセトアミノフェンなど、服用中の薬剤をすべて記載してもらう。
タミフルは新型インフルエンザ対策でも重要な役割を担う薬剤だ。タミフルとインフルエンザと異常行動との関係を明らかにすることは、タミフルの使用量が多い日本の役目でもある。報告は、感染研のホームページからも可能なので(http://953862.net、初期パスワードは「kansenken」)、全国の医師のみなさんに協力をお願いしたい。(談)
まだまだ、タミフルについては、わかっていないことが多いようです。