2007年12月09日

インフルエンザについて(3)

こんにちは、ドクタールウです。
今回もインフルエンザ関連です。

症例報告求む!「インフルエンザと異常行動」

昨シーズンから話題の「タミフル(一般名:リン酸オセルタミビル)と異常行動」の因果関係については、インフルエンザの流行が始まった今も、まだ結論が出てない。一部の研究で中間報告はあったが、最終報告はまだ。昨シーズン、1万人規模の患者を対象として行われた「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」の解析結果が、12月中にも公表される見込みで、この結果である程度の結論が得られるのではないかと期待されている状況だ。
 しかし、この1万人調査でも、はっきりとした結論が出ない可能性もある。特に「飛び降り」などの重度の異常行動は、因果関係があるとしても発現頻度が低いので、1万人では調査の人数が足りないことが想定されるからだ。
 そこで、より規模の大きい調査を目指して現在進行中なのが、「インフルエンザに伴う異常な行動に関する調査」だ。同調査で主任研究者を務めている国立感染症研究所感染症情報センターの岡部信彦氏に、その概要と意義を聞いた。
現在実施している「インフルエンザに伴う異常な行動に関する調査」は、大きく2つに分かれる。1つは「重度の異常な行動に関する調査」であり、もう1つは「重度+軽度の異常な行動に関する調査」だ。前者は国内すべての医療機関に報告をお願いしているもので、後者は全国に約5000あるインフルエンザ定点医療機関に報告していただくものだ。

 重度の異常な行動とは、「突然走り出す」「飛び降り」「その他、予期できない行動であって、制止しなければ生命に影響が及ぶ可能性のある行動」と定義した。
 インフルエンザ感染者が、このような重度の異常行動を起こす率はそれほど高くはない。仮に発生率が1万件に1件程度であれば、1万人の母集団を対象とした大規模試験であっても、症例が十分に集まらない。だから試験対象とする医療機関を限定せず、日本で発生した重度の異常行動をすべて拾い上げようと考えた。この点が、既に実施された「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」とは大きく異なっている。報告期間は来年の3月までとしている。
 一方、軽度の異常行動については、定点の医療機関のみに報告を依頼した。定点医療機関に限定したのは、おそらく報告数が多くなるので、国内すべての医療機関を対象にすると収集がつかなくなるからだ。こちらの調査は、数が多いので、定点医療機関で治療したインフルエンザ患者の数から、大まかな発生率を求めることも可能だと考えている。
 定点以外の医療機関の医師には、インフルエンザ感染者が上記の「重度の異常行動」を起こした症例を経験したら、ぜひ報告していただきたい。それを解析することで、薬を飲んでいる患者に異常行動が多いのか、多いのだとすると、どの薬を飲んでいる患者に多いのか、などが分かるだろう。
 調査は、アンケート用紙に記入する方式で、診察した医師に回答をお願いする。今回の調査では、患者や患者の保護者に回答を求めることはしない。調査内容は、発熱日時、異常行動の発現日時、患者の年齢、処方薬の有無など。処方薬がある場合は、タミフルに限らず、ザナミビル(商品名:リレンザ)、シンメトレル、アセトアミノフェンなど、服用中の薬剤をすべて記載してもらう。

 タミフルは新型インフルエンザ対策でも重要な役割を担う薬剤だ。タミフルとインフルエンザと異常行動との関係を明らかにすることは、タミフルの使用量が多い日本の役目でもある。報告は、感染研のホームページからも可能なので(http://953862.net、初期パスワードは「kansenken」)、全国の医師のみなさんに協力をお願いしたい。(談)

まだまだ、タミフルについては、わかっていないことが多いようです。

posted by ドクタールウ at 19:24| Comment(0) | TrackBack(1) | 健康 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

インフルエンザについて(2)

こんにちは、ドクタールウです。
今回もインフルエンザについてです。少し専門的かもしれません。


「タミフルと異常行動」に新データ
まずは基礎研究結果、近く臨床研究データも公表へ
厚生労働省が設置した「リン酸オセルタミビルの基礎的調査検討のためのワーキンググループ」の会議が10月24日、開催された。同ワーキンググループは6月16日に開催された第1回会議で、リン酸オセルタミビル(商品名:タミフル)の服用と異常行動との因果関係を確認するために必要と考えられる複数の非臨床試験の実施を中外製薬に指示していた。このほど中外製薬から、試験の一部について報告がされ、その結果を検討した。

 今回、結果が報告されたのは、


(1)非ウイルス・シアリダーゼ(特にニューロン組織由来シアリダーゼ)のOP、OC選択性の確認。中枢性作用に関連する受容体とのバインディング・アッセイ
(2)脳内での暴露に関連する能動輸送過程(トランスポーター)に関するin vitro試験
(3)ラットにおける脳、脳脊髄液および血漿中濃度の測定。
(4)脳内のカルボキシルエステラーゼ1(hCE1)による未変化体の代謝(エステル加水分解)に関するin vitro試験(脳組織)
の4本の試験。

 1本目の試験は、オセルタミビルがノイラミニダーゼ阻害活性以外の薬理作用があり、それが原因で副作用が生じていないかどうか、について知見を得るために実施された。中枢神経系の機能に関連する受容体やイオンチャンネル、酵素といった155の蛋白質(ほとんどがヒト由来)に対して、オセルタミビルおよびオセルタミビルの活性代謝物が、何らかの影響を与えるかどうかを観察した。試験の結果、高濃度でも影響を与えないことが明らかになった。
 2本目の試験は、経口摂取したオセルタミビルあるいはその代謝活性体が、血液脳関門(BBB)を通過して脳に蓄積するかどうかを検討するための基礎試験。まず、BBBの内側に入った薬物を外側に運びだす役割を持つ「P-糖蛋白質」に対し、オセルタミビルは高い親和性を持つ(結合する)ことが分かった。つまり、オセルタミビルが濃度勾配による受動拡散でBBBを通過しても、P-糖蛋白質と結合して基底膜側から管腔側へ運び出されることが示唆された。
 一方、オセルタミビルの活性代謝物は、P-糖蛋白質によって輸送されないことが分かった。ただし、オセルタミビルと異なり受動拡散しにくいため、そもそも活性代謝物はBBBを通過しない(脳内に移行しない)可能性が示唆された。
 3本目の試験は、成熟ラットにオセルタミビル10mg/kgあるいは100mg/kgを静脈内投与した後、5分〜8時間後の血漿、脳脊髄液、脳中の濃度を測定するというもの。脳脊髄液のオセルタミビルとその活性代謝物の濃度は、血漿中濃度に比較して低いことがわかった。脳中濃度は現在測定中で、今回は報告されていない。

 4本目の試験は、オセルタミビルが脳内で活性型に代謝されるかどうかについて検討するために行われた試験管内試験だ。もしもオセルタミビルが速やかに脳内で活性代謝物に変化するのであれば、受動拡散でBBBを通過したのち、P-糖蛋白質と結合しない活性代謝物になって脳内に蓄積する可能性がある。
リン酸オセルタミビルとは、もちろん「タミフル」のことです。
製薬会社が、自社に不利な実験結果をだすのでしょうか?
「タミフル」については、訴訟なども考慮にいれて企業は結果報告をしないでいられるのでしょうか?

posted by ドクタールウ at 19:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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