こんにちは、ドクタールウです。
今回は、「認知症」についてのアメリカの学会からの報告です。
米国精神医学会がアルツハイマー病などの認知症診療ガイドラインを更新した。
Marlene Busko
【12月14日】米国精神医学会(APA)は、アルツハイマー病などの認知症治療に役立つ診療ガイドラインの第2版を発表した。これは1997年に発行された第1版を更新したもの。臨床的根拠が強化され、有用なヒントを盛り込んだ内容となっている。
「強化された根拠は一読の価値あり」
「追認試験が数多くあったので、作成した勧告のほとんどを強化することができたと思う」とジョンズ・ホプキンス大学医学部(メリーランド州ボルチモア)のPeter V. Rabins, MDとガイドライン作成グループ代表はMedscape Psychiatryに話した。「実際のところ真新しい内容はない。根拠の強化が中心となった」。
「結局、内容は実際それほど新しくなっていない」とメイヨー・クリニック(ミネソタ州ロチェスター)のDavid Knopman, MDと米国神経医学会のあるメンバーはMedscape Psychiatryへのコメントで繰り返した。「あっと驚くような診療上の変更はなかったし、あるとも思っていなかった」。Knopman博士は、文書としてよく書けているとも言う。「診断と治療に関する多くの問題についてよく練られた文章で書かれているので、一読する価値は十分にある」。
最近の10年の発展
最初のガイドラインが発表されてから10年、新薬が使えるようになり、当時の勧告を裏付ける根拠がさらに強化された、とRabins博士は話した。
「良かった点としては、第一に新しいクラスの薬剤、memantine(商品名Namenda、Forest Pharmaceuticals社)のほかに、アルツハイマー病治療に用いる3つのコリンエステラーゼ阻害薬がFDAに承認された」と説明した。
また、第二に患者の情緒的健康を標的にした非薬物治療の有効性を示す良い根拠が出てきた。第三に、アルツハイマー病患者のうつ病治療で、薬物療法は明らかにプラセボより有効であることを示す強い根拠が出てきた。第四に、介護人に知識と心理的サポートを与えることが、介護人と患者にとってプラスになるという新たな根拠が得られた、という。
「あまり良くなかった点としては、アルツハイマー病治療でビタミンEの投与勧告を削除したことである。ビタミンEの効果を支持する新しい研究がなかったことと、高用量の場合健康上のリスクがあることが主な理由である」とRabins博士は続けた。
また、この2年では、定型および非定型にかかわらず抗精神病薬が認知症の人の死亡リスクを増加させることが明らかになった。
重要な変更点:抗精神病薬の制限
激越、妄想、幻覚、攻撃などの神経精神症状がある患者に関しては、非薬物療法をまず試してみるべきという強い根拠が出てきた。そして、家庭や長期療養施設などあらゆる環境で抗精神病薬の使用を制限する現実的努力をすべきである。「これは今回のガイドラインにおいて最も重要な診療上の変更点である」とRabins博士は付け加えた。
「抗精神病薬を処方する場合、確実に効果がある薬が必要に応じて処方されるように現実的努力をしていく必要があると思う。薬が無効だった場合は、中止すべき」とも話す。
治療計画の作成と実行
この55ページに及ぶガイドラインの要旨では、臨床的根拠に基づいて勧告に3段階評価が付けられている。このセクションは認知症状、精神病、激越、うつ病、睡眠障害の治療勧告をまとめ、心理療法、精神科治療、高齢患者の治療、長期ケア時の特殊な問題を考察している。
次のセクションは、個々の患者の段階的治療計画を作成し、実行するための案内である。最後のセクションでは、治療計画に影響する特殊な臨床的特徴について詳しく述べられている。
2003年1月から2006年12月まで、Rabins博士はAstraZeneca、Janssen、Eli Lilly and Company、 Forest Pharmaceuticals、Wyeth Pharmaceuticalsの各社から講演料を受け取った。その他のガイドライン作成グループメンバーの利害関係情報は、診療ガイドラインに記載されている。診療ガイドライン作成実行委員会が同ガイドラインを審査した結果、上記利害関係の影響は見当たらなかった。