こんにちは、ドクタールウです。
今回は、前回の続きです。
舛添会議◆Vol.7
「医師を増やす、そのリスクを取るのは政治」
舛添・厚労大臣が明言、医学部定員増の方針を改めて強調
橋本佳子(m3.com編集長)
さらに専門分野別に養成目標を設定する案についても、舛添大臣は次のように否定的な見解を示した。「職業選択の自由もあり、『あなたは産婦人科に行きなさい』とは言えない。しかし、あまり悲観的に考えていない。医学教育のオリエンテーションで相当違ってくる。(モデルがあれば)『あの先生のようになりたい』などと、産科をやりたいと考える学生もいる。ただ問題は、今のような過酷な勤務状況で、楽な道を選択する可能性も否定できないこと。つまり、意欲や野心があるにもかかわらず、それをディスカレッジする(やる気をなくす)要因があまりに多いのが問題。訴訟リスク回避など、ディスカレッジする要因を一つひとつ取り除き、レンカレッジ(励ます)するかが重要」。
「医療サービス倍増計画」を目指す?
しかし、このビジョン会議では、前述した通り、方向性を示すにとどまる見込みだ。「数値目標」の決定は、この会議ではなく政治の場に移った。当初から舛添大臣はこうした考えだったのか、あるいは変更したのか、それは定かではない。ただし、従来から厚生労働省は医学部定員増に消極的であり、それを覆すことは容易ではないことが推測される。
会議の途中、舛添氏は、池田勇人内閣が1960年に打ち出した「所得倍増計画」に言及した。やや唐突感があったが、「当時、専門家からは所得倍増なんて無理などと批判されたが、それを打ち出し、実現したのは政治」という趣旨で、政治がリスクを取る例として引用した。「医療サービスを質、量ともに充実を望む声が強い」とも話した舛添氏は、池田内閣に倣って「医療サービス倍増計画」を打ち出すつもりなのだろうか。
「医師の仕事の40%は業務分担が可能」
医療関係職種との業務分担について、矢崎氏は、「医師の仕事のうち、伝票やレセプト作成などクラーク的な仕事が10〜20%、術後の包帯の交換をはじめ、医師ではなくむしろ看護師などが実施した方がいい業務が20〜30%ある。結局、医師の仕事の40%くらいは業務分担が可能。これが実現すれば、病院勤務医は16.4万人だが、30万人くらいの数に相当することになる」と述べた。こうした業務分担のためには、看護師などの教育が重要だとした。
地域連携や総合医の関連で発言したのは、野中医院(東京都台東区)院長の野中博氏。長年、在宅医療に取り組んできた立場から、(1)入院から在宅などに至る、切れ目のない地域連携体制の構築、(2)「治す医療」だけでなく、「支える医療」が重要――などと強調。連携については、「多職種が連携して業務を行うというのは、業務内容の権限の問題ではなく、それをいかにマネジメントするかが重要。また『総合医の育成』が指摘されるが、それは医師個人の資格の問題ではない。重要なのは『患者を総合的に診る体制』であり、病院のシステムあるいは地域の連携システムの中で、その体制を作るべきだろう」と述べた。
NPOささえあい医療人権センターCOML理事の辻本好子氏は、患者の視点から、「後期高齢者医療制度をはじめ、説明不足、情報不足が今の混乱を招いている。以前、急性期・慢性期という病床区分が進められた際にも、患者さんは『(急性期病床から)追い出された』という認識を持った。それは病院がどんな役割を果たすべきか十分に説明がなされなかったからだ」と問題提起。その上で、患者自身が考え、自分の問題として医療を語り合うなど、患者が医療に参画する重要性を強調した。そのためにも、「ビジョンを策定する際には、それを国民・患者に対して、分かりやすく説明してもらいたい」と強く要望した。
「安心と希望の医療確保ビジョン」骨子案
1.医師数について
(1)医師養成数
(2)女性医師の離職防止・復職支援
(3)医師の勤務環境の改善
2.医師の配分バランスの改善
(1)地域バランスについて
(2)診療科バランスについて
(3)総合的な診療能力の育成
3.医療関係職種間の業務の分担と協働・チーム医療の推進
(1)医師と看護師との役割分担と協働について
(2)医師と助産師との役割分担と協働について
(3)医師と薬剤師との役割分担と協働について
(4)医師とコメディカルとの役割分担と協働について
(5) 医師・看護師と介護職・メディカルクラークとの役割分担と協働について
4.医療機関の分担・ネットワークの推進
(1)地域で支える医療の推進
(2)在宅医療の推進
(3)地域医療従事の推進
(4)救急医療の充実と遠隔医療の推進
5.医療者と患者・家族の協働の推進
(1)夜間・救急利用の適正化
(2)医療者と患者・家族の協働の推進