こんにちは、ドクタールウです。
今回もちょっと専門的な内容があるかもしれませんが、参考にしてください。
「タミフルが直接、異常行動を起こしている可能性は低い」
研究結果の発表受けて、厚労省の臨床WGがコメント
リン酸オセルタミビル(商品名:タミフル)服用と異常行動発現との因果関係を確認するために国が実施した調査の1つ、「インフルエンザ罹患に伴う異常行動研究」(主任研究者:国立感染症研究所感染症情報センター長・岡部信彦氏)の結果が16日に発表された。「リン酸オセルタミビルの臨床的調査検討のためのワーキンググループ」(臨床WG)の中心メンバーの1人、日大精神医学系教授の内山真氏は、この研究結果について、「タミフルを服用したかどうかによらず、インフルエンザ罹患時に異常行動が発現することが明らかになった」などとまとめた。
今回発表されたのは、2006/07シーズンに臨床医が経験したインフルエンザ患者の重度の異常行動137例についての解析結果。全国の医療機関から報告された164例のうち、日時が不明なものや、31歳以上の症例を除外した。なお、2007/08シーズンの調査は現在、実施されているところで、来春以降に結果が発表される予定だ。(関連記事:2007.12.6 症例報告求む!「インフルエンザと異常行動」)
調査では、重度の異常行動を、(1)突然走り出した、(2)飛び降りた (3)その他、予期できない行動であって、制止しなければ生命に影響が及ぶ可能性のある行動―――と定義した。解析対象となった137例で調べたところ、82人(60%)がタミフルを使用していたが、52人(38%)は使用していなかった。不明は3人(2%)だった
異常行動を起こしたインフルエンザ患者の6割がタミフルを使用していたことが分かった一方で、4割は、タミフル不使用でも重度の異常行動を起こしていることが分かったことになる。
さらに、137人のうちから10歳未満(56人)と10歳代(69人)を抽出して、厚労省から「タミフル服用後の異常行動について」(緊急安全性情報の発出の指示)が発せられた3月20日を境に(2007.3.21 タミフル、一転して「10代は原則使用禁止」に)、異常行動の発生率に大きな変化があったかどうかを見たのが表2だ。
3月20日の前後で全報告数に対する比率を見ると、10歳未満と10歳代で有意な差は認められなかった。正確な数字は不明だが、3月20日を境に、10歳代インフルエンザ患者へのタミフル処方は大幅に減少しているはず。にもかかわらず、10歳代の異常行動の報告数は、3月21日以降も特別減った様子がなかった、と解釈できる。
内山氏は、「インフルエンザ罹患時に、インフルエンザ脳症の定義には当てはまらない脳の異常が起こり、重大な事故につながる可能性があることが分かった。このことは事故を防ぐ上でも重要だ。タミフルが直接、異常行動を起こしている可能性は低くなったと考えるが、異常行動が起こるリスクを高める可能性は残されている。今後は、その点の解明が焦点になる」などと述べた。
(小田 修司=日経メディカル)