こんにちは、ドクタールウです。
今回は、不安症についての専門的な内容です。
不安症は他の心理社会的因子とは独立して心筋梗塞リスクを上昇させる
高齢男性における恐怖症、強迫思考、社会的内向をはじめとする不安特性は、平均12年後の心筋梗塞の独立した予測因子であることが研究で示された。
-WebMDの専門ニュースサービスHeartwireより-
heartwireとの対談の中で、本研究の筆頭著者であるBiing-Jiun Shen博士(南カリフォルニア大学[ロサンゼルス])は、以前から他の心理社会的因子と心疾患との関連性が示されていることを指摘している。例えば、1970年代にはいわゆる「A型気質」が話題の的となり、1980年代には敵対的性向が研究の焦点となって、この15 - 20年間はうつ病がCVDのリスク因子であるとの認識が高まってきている、と同博士は述べている。「うつ病、A型気質、怒り、および敵対心による影響を除外して解析しても、不安は心疾患を常に有意に予測することが明らかとなった」と、Shen博士はheartwireに言う。「このことから、不安症の人がうつ病になりやすかったり怒りっぽかったりするのが原因ではなく、こうした心理要因以上に、不安がリスク因子となっていることが示唆される」。
この研究は『Journal of the American College of Cardiology』オンライン版に2008年1月7日付けで掲載されている。
慢性広汎性不安
Shen博士らの研究では、平均60歳の男性735人を対象に精神衰弱(疑心過剰、強迫思考、非合理的強迫行為)、社会的内向、恐怖症、顕在性不安が評価された。空腹時血糖、肥満度指数(BMI)、高比重リポ蛋白コレステロール(HDL)、収縮期血圧(BP)、年齢、教育、および配偶者の有無について補正したところ、高度の不安(4つの不安特性のすべてがみられることと定義)を有する男性は、約12年間にわたる追跡調査においてMIを有意に来しやすかった。以前からCVDとの関連性が示されている他の理社会的因子について補正しても、不安特性は有意なままであった。
「不安傾向の素因」が高齢男性のMIリスクの高さを暗示していると考えられ、このことから予防医学の新しい道筋が開かれる可能性がある、と著者らは結論している。「中等度の不安症によるMIリスクはわずかであるが、高度の不安によるMIリスクには臨床的な注意が必要となる可能性がある」と、著者らは述べている。しかしながらShen博士はheartwireに対し、今回の研究では、不安の治療が後のCVDの予防に役立つかどうかといった、今後取り組む必要のあるテーマについては何の知見も得られていないと強調している。
心理社会的状態:複合作用
Shen博士らは、実際に不安がMIに固有の独立したリスク因子であるなら、うつ病や敵対心など他の心理社会的リスク因子とMIとの関連性を示した初期の研究の知見を不安で説明できるとの仮説を立てている。ただし、それぞれの心理社会的因子が相互に関係し、相互作用する形で心血管系リスクを高める可能性があることも同博士らは認めている。
今回の研究は高齢男性だけを対象としており、女性や他の年齢層では別の心理社会的状態が重要な役割を果たす可能性があることもShen博士は強調している。これらの心理社会的因子のすべてが同じ要因に根ざしているのかどうかや、これらの因子がどのように相互作用しているのかは、「100万ドルの賞金に値するだけの難問」であり、同博士らの研究グループが研究し続けている。
Shen博士は自身の論文が、心血管疾患の発現要因と考えられる精神的な状態や素因にも注意を払うことを循環器専門医らに忘れないようにするために役立てばと願っている。同博士いわく、循環器専門医によるうつ病の理解は進んだ。「不安、特に慢性広汎性不安が、とりわけ高齢男性では重要なリスク因子であるという認識が高まってほしい」。
米国心臓協会(AHA)および全米統合失調症・うつ病研究連盟(NARSAD)が本研究を支援した。
WebMDの専門ニュースサービスであるHeartwireの全コンテンツは、循環器専門医向けウェブサイトwww.theheart.orgで読むことができる。