こんにちは、ドクタールウです。
今回は、乳幼児を子育て中のママに是非見てほしいです。
ちょっと長いですけどがんばってください。
第9の地雷 乳幼児の眼帯に弱視の危険性
病院に勤務していたとき、小児科の先生から「虐待を受けた子どもで脳挫傷があり、視力に影響がないかどうか診てほしい」という往診依頼が来た。しかし、患児は首が座るか座らないかという年齢。これでは通常の視力検査はまだできず、乳幼児に使える検査の設備はその病院にはなかった。「動くものを目で追うかどうかくらいしか判定の方法がない」と伝えたら、小児科の先生は困っていたようだ。その後、この子は転院してしまい、どうなったのか分からないのが気がかりである。
3歳以前に視力を検査する方法には、視運動性眼振(optokinetic nystagmus法:OKN法)、選択視法(preferential looking method:PL法)、簡便な方法としてはドットカードがある。OKN法は、縞模様を印刷したドラムを眼前で回転させる方法。縞が見えている間は視運動性眼振が起こるので、縞模様の幅から視力を推定する。PL法は縞模様がある視票とない視票を見せ、縞の方を好んで見るという行動から視力を推定する。なお、OKN法は成人の詐盲の診断に使われることもある。
弱視とは子どものころに視力が発達せず、成人になって医学的に病変がないのに視力が出ない状態である。小児期の極端な遠視、近視、乱視、また、左右の視力の差、斜視などが原因となる。視覚が遮断されることでも弱視になるため、先天性白内障や角膜混濁、眼瞼下垂などのほか、眼帯も原因となり得る。
眼科手術後や処置後に必要な場合には眼帯をつけるが、視力の発達時期に片眼帯は禁忌である。乳幼児の片方の眼を手術する場合には、両方の眼に眼帯をする。時々、子どもの「ものもらい」などに眼帯をつけさせている保護者を見かけるが、これは注意してやめてもらっている。眼帯をつけるかどうかの判断は、眼科医が行う必要がある。
3歳児検診の視力検査は適切に行われているか?
3歳児検診では、絵視票、ランドルト環を渡して家で見えるかどうかを確認してもらい、0.5以上見えていればOKとしている自治体がほとんどのようである。検査自体、また検査の内容に眼科医がかかわっているところはほとんどない。
弱視をつくらないようにしたい眼科専門医から見ると、この検診内容では限界があるのは明らかだ。せめて、結膜炎など何かの症状で眼科を受診した子どもには、保護者に視力検査の重要性を説明し、4歳になるまでに視力の問題がないことを確認するようにしている。
就学前検診で先天性白内障が発見され、すぐに手術となったが、弱視になってしまった子どもがいた。3歳児検診の時点で「片方の眼が全く見えていないようだ」と言われても、「小学校に入学するまでに見えればいいから」と保護者はのんびり構えていたようだ。弱視の概念は理解しにくいらしく、学童期の近視の方を気にする保護者も多い。発達時期である就学前こそ、正しい視力検査が重要という認識を広める必要がある。
詳細はこちら